昨晩もあまり焼けなかったので引き続きプリント。バットに浮きぶたをかぶせたままほったらかしてあると、ちょっと時間ができたら即座にプリントにかかれる。それも大全紙でだ。これはモノクロでも可能な、ものぐさにはもってこいの方式。ただし現像液は酸化耐性が高い必要がある。まあDKが常設の暗室と化しただけなんだが。
考えてみれば、かつての新聞社なりラボなり営業写真館の暗室だってそんなだったわけだ。一般の常時作業用の暗室なら処理液をためたまま補充していくことになる。90年代半ば、新聞社は紙面のカラー化にともない、各社こぞってモノクロネガからカラーネガに移行していた。むろん画像の大部分は1色刷だが、カラーネガからパンクロペーパーに焼き、ここぞというときにはカラーネガならカラー原稿に対応できる。そして自現機を導入して手作業工程を相次ぎ廃止していった。デジタル移行前夜のわずか数年間の話。そんななか、日経は業界の中でもかなり遅くまで従来型のモノクロフィルムとモノクロ印画紙を暗室で現像する工程のままだったという。その暗室の定着液はどろどろに濁っていて、写真部員の若い女性が替えましょう替えましょうとさんざん訴えているうちにうとまれてしまい、しまいに「定着液替えたがり女、替えたガール」などと揶揄されていたそうだ。あんな待遇のいい勤め先を辞めると言っていた彼女はその後どうなったのだろうか。こっちはこんなだけれど辞めたのを後悔したことは一度もない。そういえばこないだ飲み友達から、昔はよかったとか会社辞めなきゃよかったとか1回も言わないのは立派、とか言われたけれど、なんでそれがほめことばになるのかよくわからない。よかったと言える昔があるほうがよっぽどうらやましい。それはそれとして作業。
仕上げのドライウェルはたぶん省略。水切り剤がなくても印画紙はきれいに乾きそう。かえって漂白定着液の飛沫が混入するなど、液を使い回すことによる汚染が懸念される。
あと1、2枚焼いて、明日乾燥した結果をじっくり見て補正値を考えよう。雨降りだし乾燥にも時間がかかる。こうやって気長にプリントするのは、いつものように個展前に追い込まれての作業よりゆったりできていい。追い込まれて特殊な精神状態で焼くのも、あれはあれで乙なものではあるけれど。