貸画廊を借りていたひとびとはどこへ

またまた続き。銀座あたりの貸画廊の衰退の受け皿がどうなっているのかという点について、公募コンテスト類と海外進出だと思っていたのだが、どうやら各種アートフェアとかプレゼン型売り込みイヴェントらしいとやっと気づいた。そのへんの情報を遮断しているので知らなかった。10数年前から行われているような、商業画廊が出店する見本市だけでなく、ブースを賃貸しする催しがいろいろあるらしい。自費出版みたいなもんだ。ひと頃問題になった「共同出版」のほうが近いのかもしれない。どこで調べたのか知らないが、しつこく出店、もとい出展か、どっちでもいいけど、勧誘メールを送ってくる業者がいて、応募がかんばしくないのか申し込み期限を延長したりしている。ブースを出すのではなく、ファイルを並べたりスクリーンに上映して、ミスコンよろしく審査されるようなのもあるようだ。まったく知らなかった。ファッション化され、貸画廊のビンボ臭さが表向き払拭されている様子。その上、貸画廊で個展をやるよりも、確実に業界の実力者に見てもらえるから効率がいいというわけだろう。おかしいのは、貸画廊制度をさんざんこき下ろしてきたお歴々がこういうのの片棒担いでいること。まあその程度だろうな。なんにせよまるで縁はない。お祭り騒ぎはもとから苦手。
しかも、商業画廊のアートフェアにしても、この手の見せたい人から捲き上げる催しにしても、観客から金を取るのである。かつてつきあいのあった人物が、ひとつだけいいことを言っていた。売るなら金取るな。金取るなら売るな。どっちかにしろ。まったくその通りだ。いったい、物品の販売で収益を上げる小売り業種で、客から入場料をせしめるなどという商慣行がどこの世界にあるのだろうか。幕張や有明の見本市で入場料を取る催しもあるが、あれは展示を見に行くものであって、ものを買うのが主目的で行く場所ではない。こんなことがまかり通っているのはこの世界だけだ。自費開催型の催しなら、出展者の負担で商売は成立しているはずである。おまけに、その手のひとつのウェブサイトのどこを見ても、観客が払わされる入場料について書かれていない。他のイヴェント情報ページでようやく入場料500円との記述を見つけた。間借りする「アーティスト」に対しての情報のみで、そっちにしか顔が向いていないわけだ。観客のことなど一顧だにしていない。にもかかわらず観客にも支出を強いる。貸画廊も直接の客は借りる展示者だが、観客に対する配慮はされているし、だいたい観客から小金をかすめ取るようなまねはしない。個展のために貸画廊を金払って借りたことのない者が言うのもなんだし、全部がそうではないのだろうが、連中が腐してやまない貸画廊のほうが連中よりもよほど良心的である。