カラーネガの自家現像について日本コダック富士フイルムのカスタマーサポートに電話で問い合わせ。その内容をwebにさらすのはフェアではないのかもしれないが、こういう情報が役に立つ人もいるだろうし、ひいては銀塩感材の存続にいささかなりともつながればと思い、あえて記しておく。こういった技術情報関連の検索での来客が多いのである。それと、何年後かの自分のためのおぼえがき。ここに書いときゃなくさない、はず。ここは公開メモ。でもこんなことばっかりながなが書いてると、写真論を読みたい読者は離れていくんだろうな。それはともかく、悪意やメーカーに不利益をもたらそうという意図などはまったくない。こちらの解釈が加わっているのでサポートの回答通りではない。誤解もあるかもしれない。
Kodakのカラーネガ現像プロセスC-41RAのKODAK FLEXICOLOR Final Rinse and Replenisherには化学水洗と水切りの役割がある。画像安定剤は含まれていない。それ以前のStabilizer2には画像安定剤が入っており、この点が違う。現在のカラーネガには安定剤が入っているので外部から供給する必要はない、という理解でいいらしい。リンス浴は、大量の水を消費する水洗のかわりに導入された工程であり、あくまで水洗の代替手段であるから、本来は水洗のほうがいいとのこと。これは間違いがなさそうだ。水洗の場合にはそのあとにKODAK FLEXICOLOR Final Rinse and Replenisherを使ってもよく、そのようにしているプロラボもあるという。ただその場合にKODAK FLEXICOLOR Final Rinse and Replenisherの役割は水切りしかないので、フォトフロとかドライウェルでも同じとのこと。それらを使わない場合にはスポンジで水を拭く必要がある。モノクロフィルムと同じこと。発色現像浴の条件は37.8±0.15℃で3m15sのみ。印画紙現像では27.2±0.3℃まで許容されるが、印画紙では露光時の調整で色や階調の偏りが補正される余地があるので寛容度が広いのに対し、フィルムはもっとシビアということらしい。
富士のほうはというと、フジカラーネガティブフィルムプロセスCN-16、CN-16X、CN-16Q、CN-16FA、CN-16L、CN-16Sと用途によっていろいろあるそうだ。手現像には発色現像がCN-16 N1Rで漂白以降はCN-16Xが適しているとのこと。うーん。オリエンタルが「ミニラボ用です」と突っぱねるのもわかってきた。印画紙処理薬品ほど単純ではないということか。
繰り返しになるが、カラーネガ印画紙の自家現像はある程度普及しているし、いくつかのレンタル暗室のように、業者ではあるのだが、処理の内実はわれわれ個人と同じ卓上プロセッサでやっているという商業的用途もあるので、こうした少量処理の方法や問題への対策はある程度確立されているように思う。一方カラーネガ現像を考えてみると、時間と温度の決まった一律の処理であり、モノクロフィルムのようにたくさんの現像液の処方があって、使う現像液が実効感度、特性曲線、粒状などに大きな影響を及ぼし、希釈率や攪拌のしかた1つでネガのエッジシャープネスに違いが出る、といったものとはまったく異なる。発色現像型でない一般のモノクロネガは、同じD76で現像したとしても製品ごとに現像時間が異なるが、一般のラボがカラーネガでそんなことをやっていたら商売がなりたたない。カラーネガは大量処理に合わせて標準化されている。モノクロとはまったく違う。むろんRA-4とCN-16の差とか、同じ薬品でもラボによって濃度や階調が変わってくる、といったことはあるらしいがそこまでの差なんて漫然とカラーネガプリントやってる程度ではほとんどわからないけれど、それは単に処理の振れ幅があるというだけで、いわば標準処理からの誤差にすぎない。工芸的性格を帯び多様性のあるモノクロネガ現像に対して、カラーネガ現像は標準化されているのである。だから個人で行う理由があまりない。一般には、コストと、待たず出かけずにすぐに結果が得られる、という程度。そのため、カラーネガの自家現像を本格的にやっているひとは少ない。そして情報も乏しい。やはり純正の薬品を使うのが無難だろうか。オリエンタルの富士互換薬品はCN-16LとCN-16S互換のみだが、CN-16S互換はカートリッジ式なので使えるとしたらCN-16L互換のみ。KODAK FLEXICOLORにはこんなにたくさんの種類がないようなのでシロートにも手が出しやすそう。
富士の安定剤ではN4X-Rが手現像には適しており、乳剤の硬膜剤と、画像安定剤、水切りのための界面活性剤が含まれるという。ところが、C-41では硬膜剤は定着液に含まれるとのことだった。モノクロと同じ。つまり、工程によって別の処理液をちゃんぽんにするのは好ましくないのだ。他にもいろんな不具合があるかもしれない。しまったコニカミノルタの定着液を買ったのは失敗だった。たぶん使うけど。
発色現像浴での30℃以下での処理はデータもないし充分に処理されない可能性があるとのこと。38±0.2℃の3m15sが原則で、せいぜい35℃が限度だろう、と。現像時間短いなあ。ムラなくできるんだろうか。やっぱ無理だろうか。
CN-16でコニカImpresaを処理すると不具合が発生するという件。安定剤に配合されている画像安定剤はかつてホリマリンだったが、ホルマリンが使えなくなったために現在は同様の作用のある別の成分に変更されているという。ところが、Impresaは古いタイプの色素のため、変更後の成分では適切に処理されず、結果として画像に悪影響があるという。なるほど。そうだとすれば、CN-16でAgfaUltraを処理した場合の不具合も同じ原因だろう。また、オリエンタルのCN-16互換製品でも、おそらく同様ではないか。これを解決するには、コニカの安定剤を調達するなりしなければならない。
コニカカラーイメージング亡き後、クリエイトでImpresaをかなりたくさん現像したのだが、あれは基本的にCN-16で処理されていたはず。不安になる。窓口でも、店員同士で「Impresa大丈夫ですか」「大丈夫」といったやりとりがあった。Impresaだけ最終リンス液をコニカ製に変更してくれたんだろうか。心配。でも考えてみたら、クリエイトに出したのは612の120が大半で、2006年に重要ネガは溺死させているので、案ずるまでもなかった。そういえば昭和天然色の営業部門が中井にあった2001年頃にも4x5ネガに水滴の飛沫を飛ばして痕をつくってしまい、再水洗したいからと最終浴の薬品をわざわざとりよせてもらって実物も見たのに、量が多くて使いきれないとびびったか、次に引き取ります、と言って逃げたのか、結局そのままで昭和天然色も消滅したんだった。受付のお嬢さんには悪いことをした。そのあとコニカカラーイメージングにいたけれど、結局「リストラ」されたんだろうか。気の毒になあ。
ともあれ、やっぱりオリジナル製品の供給元は歯切れがいい。頼りになる。やっぱり純正薬品使おうか。信頼性を買うということで。でもCN-16は液量が多い。発色現像補充液、漂白液、定着液、安定液、いずれも40L。小分けでもない様子。多すぎますってば。C-41か。いずれにしても、ヨドバシあたりでおいそれと手に入る代物でない。発色現像液は毒物扱いで販売には許可がいるらしい。互換のオリエンタルカラーはネットで手軽に注文できて、重いリキッドケミカルを運ぶ必要もないし、楽なんだよな……