ふた晩保管後の薬品をプロセッサに投入。印度の味の瓶に入れてあった発色現像液は密栓していなかったからか空気が多かったせいか褐色に変色し黒い沈殿物が見える。カレーのにおいと混ざって独特の臭気を放つ毒液と化す。これはやめておく。鏡月グリーンのPETボトルに入れてあったほうは、多少黒変しているもののそれほどの劣化はなさそう。プリントしてみるとまだちゃんと色が出る。
ハンズ加工の5mmアクリルでマスクのテスト。最初からこれを101x126mmで角穴開け処理すればよかったのだが。ボケ足はまずまず。アルミを削ればもっと派手な反射が出るわけだがそれでは目につきすぎ。マスクが画面に与える影響ではなくて、ネガキャリア受けという機構に対して必要な要素をどれだけ満たすかということで考えると、2mm厚のアクリルを貼り合わせるよりは押し出しであれ5mm1枚のほうが平行精度上明らかに有利である。また両側で支える場合2mmよりも5mmのほうが板のそりが少ないと考えられる。でハンズに行って5mmで再加工してもらう。5mmにはつや消し黒がないが、つや消し黒だって反射率はさして低くないので大差なし。つや消しのほうがつやありより切断部の欠けが生じやすいという。今回はつやありということもあってか完璧。しかし手作業なので角の処理などは荒さがある。これでも不満ならレーザー加工だが、それだと切断面に光沢が出るようだし、あんまりここに注力しすぎるとさすがに本筋を外れている気がしてくる。で、焼いてみたら焼き込みの影響を忘れていた。それにノッチが黒フチ側にも出る。やはり2mmでよかったか。結論は大伸ばししてみてから。
ハンズで売っていた、アクリルと塩ビとABSを丸ごと溶着できる「アクリダイン#4」だが、アクリル溶剤と塩ビ溶剤を混ぜてあるわけではないとのこと。固定までにアクリル専用溶剤より時間がかかるが、接着強度は遜色ないという。ただアクリルと塩ビは可能と書いてあるが、塩ビ同士は書いてない。それは専用溶剤のほうがいいのだろう。これは最近発売されたのだろうか。2005年時点ではたぶんハンズにはなかった。それとも当時「溶剤が混合されたもので接着力は弱い」と説明を受けたものがこれなのだろうか。
ネガ上のホコリ跡はどうしても目についてしまうが、再撮影していたらいつまでたっても次に進めないし目をつぶることとする。ネガへのスポッティングが技術的に可能かどうかが次の関門なのだが、双眼ルーペから揃えなければならない。写真乾板とマシンコートの印画紙が普及して以降、写真は手工業産品から工業製品へと移行し、そのハンドリングは万人に開かれることとなった。以前も書いたとおり、写真のあらゆる工程は基本的に誰でも訓練さえすれば習得できるように設計されている。撮影から展示やアルバムづくりにいたるまで、標準的な工程を踏む限り、職人技とか一部の人のみが持つ能力を要する作業はほとんどない。模型製作や銀細工などと違って、不器用でも不器用なりにひととおりの操作は行えて、なんらかの成果が達成できる。それはKodakというアメリカのメーカーが、諸工程が確立されていくにあたって主導的な役割を果たしたことが大きく寄与しているのだろう。カメラが手の大きさに合わないとか力が足りなくて操作できないとかいうように、身体的条件に適合しない局面はあろうが、そうした場合に応じて別の手段がたいてい用意されている。パソコンは使える人が制限されないようにあらゆる面で整備されている。少なくとも表向きは。それがこれだけの普及を実現した。写真も同様の理念に貫かれている。それがほぼ実現されたのはデジタル化以降だが、銀塩写真もよって立つ理念は同じである。そのような意味での普遍性、そしてまた合理性に基づいて写真というメディウムの体系は構築されている。
ただ、原板とプリントの修整だけは、筆先を微細に制御できなければならず、不器用な人には文字通り手が出ない。写真の中で「人を選ぶ」唯一の工程であろう。4x5判は比較的ネガサイズが大きいので、米粒に字を書くほどの超絶技巧は必要ないにしろ、難度の高い作業であることは間違いない。はたして可能かどうか。
この時期ですでに暗室が暑い。遮光すると換気ができず熱がこもり、プロセッサのヒーターからの余剰熱量が大きいようで外気より室温が上昇する。7、8月はかなり厳しそう。隣の部屋からエアコンの冷気を導いてこれるかどうか。これが最大の難題かもしれない。