スポッティング(7) さらに針

エッチング用のニードルが使えるのではないか。銀座で探す。月光荘、ナビス画材、ハンズ銀座、伊東屋と回るがどこにもない。養清堂画廊は版画用品も扱っていたような記憶があるが気のせいだったか。シロタ画廊の近隣に画材屋が2件くらいあったと思うのだが閉店とのこと。どこにあったのかもよく思い出せない。銀座もあまり行かなくなると土地勘が鈍る。ナビスは上の画廊には何度も入ったけど画材屋ははじめて。商品はホコリをかぶっていて動いている様子がない。取引先を見ると大手ゼネコンや設計会社が並んでいる。パース画でかなり稼いでいるらしい知人は、10年以上前からパソコン入れてネットもやっており、下絵にはパソコン使うけど、今もフィニッシュは筆と絵の具使っての手描きとのこと。そのほうがはるかに効率がいいらしい。そういえば竹中工務店で設計やっているという人がここから仕入れているとなびす画廊で聞いたことがある。そういうのでもなければ銀座で画材屋が自社ビル建てられないだろう。外販中心で個人客は相手にしていないのだろうか。よく上の倉庫から品物を下ろしているのにエレベータで出くわす。でも中心は額縁らしい。
伊東屋ではエッチングニードルが今はないとのことで昔は扱っていたらしい。版画人口がそれだけ縮小しているということか。上階に上がったのは10年ぶりくらいだが、昔よりゆったり空間が使ってあって、そのぶん商品は減っているのだろう。版下用品なんてまずなさそう。だが、エッチングニードルの代わりになるかと思っていた謄写版をけがくための鉄筆がなぜか残っていた。10本くらいあった。どうして?  ロウ原紙はもう手に入らないらしいのに。鉄筆は両端がニードル状で、根本が太くて先がきゅっと細くなっていて、しなるおそれはない。ラバー巻きで持ちやすい。往時にはこれで何時間も文字を書いていたわけだから、そのへんの配慮は万全。先は丸い。ボール紙の箱に無造作に入っているくらいだから筆先が研ぎすまされているとは期待できない。先端の傾斜が縫い針にくらべると急で、これをとがらせるのは手間がかかりそうだし、何回か研ぐとすぐに短くなりそう。そして700円以上もするのでやめる。懐旧趣味でやっているわけではない。FaberCastelの色鉛筆があり、210円とかなので試しに買ってやってみるかとも考える。だが、縫い針でも先が太いのにこんな柔らかい色鉛筆をとがらせた状態を維持しながら修整するのはかなりの労力が必要だろう。それだけやってもネガ修整だけで完結させられるとは考えられず、結局プリントで再スポッティングする必要が出るのだろうから、それだったら針のほうがとがらせる手間が省けるぶんいいのではないか。レジを見ると客が長蛇の列をなしているので即とりやめ。
ハンズは店員が売り場の位置を知らず、訊くとそのつど虎の巻をめくっている。既存店とは店員の質がまるで違うが、開店して間もないからということではなく元が駄目なんじゃないかという店員ばかり。エスカレータの狭さに地代負担を感じるが、そのわりに陳列はゆったり。当然品揃えは悪い。ちゃらい「ステーショナリー」とやらが多いのでなおさら。しかも平日とはいえ客は少ない。あそこ長くないんじゃないか。針の軸としてラミン丸棒10mmφ910mm105円を購入。もうちょっと太いほうが持ちやすいのだが、針がしならないためには針の露出を抑える必要があり、軸から針の先しか出ていない状態で立てると、軸が太ければ軸に針先が隠されてしまうだろうから、太すぎるのもやりづらいかと考えての判断。